私のシネマワールド

映画の事を中心に、気の向くままに書いております。

家族のレシピ  食欲をそそられたハートフル映画!

                           
           家族のレシピ  
                        

 

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日本とシンガポールの外交関係樹立50周年(2016年)を記念し作られた、シンガポール、日本、フランスの合作映画、家族のレシピを見ました
            

真人(斉藤工)は、父の和男(伊原剛志)の営むラーメン店で、父の弟の明男(別所哲也)と共に、働いています。
           

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和雄は店が終わると一人バーに行きお酒を飲み、真人は家の台所で味の研究に余念がありません。
住まいも職場も一緒ながら、仕事以外では親子の会話はほとんどない。。。そんな生活が長年続いているのが、冒頭のシーンでわかります。
そんなある日、和雄が急死してしまいます。 真人は父の遺品から、20数年前に亡くなったシンガポール人の母の日記と写真、料理のレシピ そして母の弟からの手紙を発見します。
考えてみると真人は10歳頃までシンガポールに住んではいたのですが、母の死後めっきり口数の減った父親と暮らしていたせいか、両親の事もシンガポールにいる母の家族の事もほとんど知りませんでした。
真人は両親が出会い、自分が子供時代を過ごしたシンガポールへと行く決意をします。

 

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シンガポールへ行くに当たり、頼りにしたのが、かねてより交流のあったシンガポール在住の日本人フードブロガーの美樹(松田聖子)です。

彼女はシングルマザーで一人息子を育てています。シンガポールの食文化に詳しい美樹は、お勧めのお店に連れていってくれたり、中国語で書かれた真人の母の日記を訳してくれたり、母の弟のウィ―叔父さんの居場所を探してくれたり、本当に頼りになる人物でした。
彼女の協力があればこその、母方の家族との再会でした。

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久々に会った叔父ウィーは、自分の食堂にやってきた真人を見て、信じられないとゆう様子。子供の時以来の再会は感動的なのとなりました。
その後ウィーは自分の家へと招き家族を紹介します。
彼の妻や子供達は、みんなフレンドリーで、真人の訪問を歓迎してくれました。
その時、真人は叔父に頼みごとをします。それは叔父の店で食べたバクテー(肉骨茶)の作り方を教えて欲しいとゆうものでした。
  
バクテーは、肉をじっくり煮込んだマレーシアやシンガポールのアジアのソウルフード
豚の骨付き肉もスープも栄養満点
バクテー(肉骨茶)とゆう字だけ見ると、何やら恐ろしく、美味しくもなさそうですけどね~(笑)

快く引き受けてくれたウィーは、そのレシピを教えてくれました。
 

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(以下ネタバレあり。。)
ところで真人にはこの旅での一番の目的がありました。それは一度もあった事のない母方の祖母に会う事でした。
子供の頃に住んでいたのに、祖母との写真も、関わった記憶がないのです。その理由も知りたい事をウィーに話すと後日、真人を祖母マダム.リーの家に連れて行ってくれました。
彼女は親しみやすそうな女性でしたが、真人が実の孫と知ると態度を一変させ部屋へと入ってしまいます。

マダム.リーは娘が日本人と結婚する事に反対でした。
それは悲しいかな過去の戦争が影響しています。第二次世界大戦  その頃日本の占領下にあったシンガポールには悲惨な歴史があり、祖母は父親を殺されたとゆう気持ちを、ずっと持ち続けていたのです。そんな国の男と自分の反対を押し切ってまで結婚した娘メイリアンを許せなかったのです。

シンガポールの軍事博物館で史実を知った真人は、たまらなくなり、酒を飲みました。 その足で祖母の家に行き、玄関先で母の想いを訴え、日記を渡します。日本語が理解できない彼女には、何を言ってるかわからなかったかもしれませんが、日記で少しでも母の気持ちが伝わればと思ったのです。
 
後日、真人はまた祖母の家を再び訪ねます。祖母は出てきてくれませんでしたが、玄関先にある料理を置いて帰ります。
それは日本のラーメンと、叔父から習ったバクテーを融合させ完成した「ラーメンテー」でした。 その味に込めた真人の気持ちはマダム・リーに通じるのでしょうか?
 
 
玄関先に置いてあったラーメンテーに気が付き、温めて食べたマダム・リーは、何とも言えない味に、思わず笑顔になります。
後日、今度は彼女がウィーの家に真人を訪ねてきました。驚く真人に親指でグーを出すと、娘の日記に書かれていたレシピを教えてくれるとゆうのです。二人は一緒に料理をします。 出来上がった料理。 そのスープの味は まさに幼い頃母が作ってくれた真人の記憶の中にある母の味でした。その味はきっと祖母から母へと受け継がれた味でもあるのでしょう。
真人は食べながら涙し、二人は抱き合います。
ごめんね…そう言ったマダム.リーの言葉に胸が熱くなりました。

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 (感想)    
 この映画は、たまたまWOWOWで見たのですが、実際には昨年2019年の3月公開の作品だったのですね。
シンガポール人の母と日本人の父との間に生まれた息子が、父の死後遺品から見つけた幼くして亡くなった母の日記、それがきっかけで、シンガポールへ両親のルーツを追って旅するストーリー
そして食の王国シンガポールで愛されているバクテー(肉骨茶)と、日本のラーメンを融合させたラーメンテーが誕生するまでの秘話、母方の家族との再会、そして再生が盛り込まれています。
 
美味しそうなお料理のオンパレードですので、空腹時には見ない方がいいですね(笑)
斉藤工さんは監督して、そして俳優としても才能のある方ですが、今回も力が入り過ぎない自然な演技が良かったです。
食事の時、手を合わせて「いただきます」と言うシーンが多かったですが、食に対する感謝の気持ちが表れていて、少なくても役柄的にも食にたずさわる者としての姿勢が見れて気持ちが良かった。
そして食べると「美味しい~」 「本当に美味しい~」と言ってましたが、それもリアル感があって良かったです。
もしかしたら、もう少し何がどう美味しいのか言葉にした方が良いと思った方もいられるかもしれませんが、レポーターでもない私達は、美味しい物を食べたら「わ~美味しい~これ」こんな感じですよね。
シンプルな言葉ですが、それ以上何が必要?と思ってしまいます。 なのでこうゆうさらりとした台詞が多くて、自然体のところが個人的には見やすかったです。
 
途中で聖子ちゃんが出てきてびっくりしましたが、意外にもこの役に合ってた気がします。
 
それにしても真人の父親は、もう少し強く明るくあって欲しかったです。
真面目なのは伝わってきますが、真人との食事のシーンでも会話はなく、この人と食事するなら一人がいいな~と思ったくらいです(-_-;)

シンガポール人の妻と反対されても結婚し、家族との絆を断ち切ってしまった。家族もいない遠い日本に連れて来て、若くして亡くなった妻への申し訳なさもあるでしょう。
でも、自分だけがつらいのでしょうか? 母親を失った真人の気持ちはわからないのでしょうか? 妻の分まで子供を愛し会話し育てていく事が、一番妻も喜ぶ事なのに~
回想シーンで、父の和雄が母のメイリアンと出会い、デートするシーンなども出てくるのですが、もちろん若さもありますが別人のごとく明るくはつらつとしていました。

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どうも晩年の和雄には共感できない私でした。 それでも真人が良い青年になってくれたのは救いですね。
 
戦争とゆうもののむなしさが、またまたこの作品でも感じられましたが、真人の諦める事のない気持ち、そして行動が祖母の心を溶かしたのですね。
戦争は忘れてはいけない事ですが、その恨みを憎しみを次世代へとつなげないでほしい。二度とこんな悲惨な事を起こしてはいけない。。。それだけの意味で正しく記憶していきたいです。
 
それにしても、バクテー食べてみたいです。 骨付きの肉にかぶりついて、美味しいスープを飲んで。。。。揚げパンもつけて、ついでにビールなんかあったら最高ですね。         

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後になると、映画の内容より食べ物ばかりが頭に浮かんできました~(笑) 数年前に行った台湾の屋台の食べ歩きを思い出したり。。。
シンガポール、行ってみたいな。 でもこの状況では、安心して海外に行けるようになるまで何年かかるのか。。。
ま、とりあえず緊急事態宣言も解除になったので、もうしばらく様子を見て今よりさらに安心できたら、日本でいいからバクテーを食べにいってみたい。。そう思った私でした。
 
 
 
■キャスト
斎藤工 (真人)
マーク・リ (母の弟 ウィー )
ジネット・アウ(真人の母 メイリアン)
伊原剛志 (真人の父 和雄)
別所哲也 (真人の父の弟 明雄 叔父)
ビートリス・チャン(マダム・リー 母方の祖母)
松田聖子 (美樹 フードブロガー)
 
■スタッフ
監督:エリック・クー(『TATSUMI マンガに革命を起こした男』)
主題歌:シシド・カフカ「Hold my Hand」
製作:Wild Orange Artists、Zhao Wei Films、Comme des Cinemas、Version Originale
プロデューサー:橘 豊、フォンチェン・タン、ジュシアン・ハン、澤田正道、エリック・ル・ボット
撮影:ブライアン・ゴートン・タン
脚本:ウォン・キム・ホー
料理監修:竹田敬介
スチール:レスリー・キー
配給:エレファントハウス/ニッポン放送