私のシネマワールド

映画の事を中心に、気の向くままに書いております。

永い言い訳  観て欲しい映画の一つになりました。

             永い言い訳

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      (ストーリー)
人気小説家の津村啓こと衣笠幸夫(本木雅弘)の妻で美容院を経営している夏子(深津絵里)は、バスの事故によりこの世を去ってしまう。しかし夫婦には愛情はなく、幸夫は悲しむことができない。そんなある日、幸夫は夏子の親友で旅行中の事故で共に命を落としたゆき(堀内敬子)の夫・大宮陽一(竹原ピストル)に会う。その後幸夫は、大宮の家に通い、幼い子供たちの面倒を見ることになる。
(キャスト)  本木雅弘  竹原ピストル 藤田健心 白鳥玉季 堀内敬子
池松壮亮 黒木華 山田真歩  深津絵里

永い言い訳、観ました~「ゆれる」「ディア・ドクター」の西川美和監督が、第153回直木賞候補作にもなった自著を自身の監督、脚本により映画化した作品です。
映画館で観れなかったのですが、遅ればせながら観れて良かったです。
 
作家の衣笠幸夫(本木雅弘)が、妻で美容師の夏子(深津絵里)に髪を切ってもらってます。彼は人気作家でもありテレビにも出ていますが、髪を切ってもらいながら、自分の出てる番組をつけてる妻に「くだらない、消せよ」と言います。「見てるんだけど~」とゆう夏子を無視してテレビを消します。今度は編集者の前で幸夫君と呼ぶのも止めて欲しいと言います。↓
 
幸夫 「そのさ おとといもだけどさ 編集者が家に来た時ぐらい何とかしてくんないかな?」
夏子 「うん?」
幸夫 「だから呼び方」
夏子 「あ~幸夫君て? ウソ~呼んでないでしょ」
幸夫 「呼んだっつうの 4回も」
夏子 「すご~い 数えてる」
幸夫 「しらじらしい わかってやってんだろ? 俺に恥かかす気で」
夏子 「恥って何? 私はずっとそう呼んできたのよ。あなたが小説家になる前から。。」
幸夫 「てめえで食えもしなかった時代を忘れんなよってこと? つまり。。ま、俺のメンツなんてあなたにはどうでもいいだろうけども」
夏子「あのね そんなことで、あなたのメンツはつぶれたりしないって言ってるの。私は」
幸夫 「じゃあ、連続試合出場記録の世界記録作った野球選手と同じ名前で人生生きてみろよ。俺はあの名前で生きてる限り、鉄人衣笠幸夫のまがいものでしかありえないの」
夏子 「あなたは野球選手じゃないし、そうゆうすごい名前に生まれついた人だって、たくさん」
幸夫 「じゃ、あんたも、そうゆうすごい名前に生まれついたことがあるんですか?ってことなんだよ。ね、ある?」
夏子 「ないけど」
幸夫 「ないよな、 なければ一生わからない。」
夏子 「沈黙」
幸夫 「同情しなくていいから。。どうせ俺は自分の事も、まともに受け入れられない男だよ」
夏子 「そんな風に言わないでよ。私は衣笠てゆう名字が好きだし、幸夫君てゆう名前も素晴らしい名前と思ってるの。結婚する時言ったでしょ? 私は田中って平凡な名字だから」
幸夫 「そんな頃の話はいいよ」
夏子「。。。そうね」
 
ここで手を止め、幸夫のカットは終了となります。「おしまい?」とゆう幸夫に「完璧」と答える夏子。彼女はこれから、友達と旅行に出かける予定があったのです。
 
「間に合うの?」とゆう幸夫の言葉に、「だめかもね~」と笑いながら答え、夏子はあわただしく出て行きます。妻が出て行った後、カットの途中で入った愛人からのメールを見ようと携帯を手にした瞬間、足音が。。。あわてて元に戻す幸夫。ドアを開けたのは出て行ったばかりの妻でした。「何?」とゆうと、夏子は「悪いけど、後片付けお願いね」 「そのつもりだけど」とゆう幸夫の言葉を聞くとドアを閉めて出かけて行きました。
 
結局この言葉が、二人の交わした最後の言葉になりました。
この後、事故にあい、夏子は帰らぬ人となります。
 
どうですか? この冒頭のシーンだけで、二人の関係がわかるような気がしますよね。 会話がまるでかみ合ってません。冷めてます。もう少し言い方があると思いますが、妻を一度「あんた」と呼んだのにはびっくり。気に食わない。人を傷つける事に鈍感のようです。夏子がその表情で、我慢しているのがわかります。
夏子はできた女性で、小説家として売れない時も、幸夫を支えてくれ、小説を書く事を勧めてくれたのも彼女でした。その事に引け目を感じているのでしょうか?
すべてに、突っかかるいい方です。
 
幸夫は衣笠幸夫とゆう名前が、連続試合出場記録の世界記録作った野球選手と同じ名前とゆう事に、なぜこんなにコンプレックスを持っているのでしょう?
同じフィールドでない他の小説家とゆう分野で成功を収めているのに。。。しかも津村啓とゆう名前で活動しているのですから、家に来た編集者の前ぐらいでは、妻が幸夫君と呼びなれた名前で呼んでもどうってことないと思いますが~自意識過剰ですね。好感度の高い役の多い本木さんが、とても嫌な男を冒頭から印象ずけてくれました(笑) さすが役者さんです。
 
妻が出かけた後、幸夫は愛人、福永(黒木華)と一夜を共にします。
おりしも翌日、二人は山形県で起きたバス転落事故のニュースを見ていました。
まさかそのバスに、妻の夏子が乗っていたとは知らずに。。。

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警察の電話で出向いた幸夫でしたが、昨日食べた物や出かける時に着てた服を聞かれても、食事はバラバラ、そもそも誰と何処に行ったかも知らない幸夫は、ただ淡々と思い出しながら答えるだけでした。普通は驚き取り乱すのでしょうが、その後夏子の死が確認された後も涙すら見せませんでした。
 
涙も出ないまま迎えた葬儀でしたが、世間の目を気にしてか、葬儀の挨拶では目頭を押さえる演技も。。葬儀場を出てマスコミの目を逃れ車に乗った後は、ミラーに映る自分の髪型のチエック、その後はPCで世間に自分がどう見られているか気になるらしく、津村啓とゆうペンネームの名前を入れ、記事を検索するを姿には、びっくりしました。
 
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事故調査委員会の報告に参加したものの、幸夫は一人だけ、どこか他人事のように、遺族とバス会社のやり取りを見ていました。。その中で一番怒りをあらわにしていた男が、夏子の親友、大宮ゆきの夫、大宮陽一一(竹原ピストル)でした。洋一から声をかけて来てくれ、それを知る事となりました。
 
あの日以来、初めて家に来た愛人、福永は、自分と幸夫が不倫中に夏子が亡くなった事で、罪の意識に苦しんでいました。眠れないと涙ながらに訴えます。そんな福永を押し倒し、いつも通り関係を持とうとする幸夫に「バカな顔」と冷たく言い放つと、「先生、私のこと抱いているんじゃない、誰の事も抱いた事はないですよ」と言い、唖然とする幸夫をおいて帰って行きます。
自分の苦しさを理解しようともせず、そうゆう行為に及ぼうとする彼に、愛想が尽きたとゆう感じなのでしょうか。。。当然の事だと思います。この人はいつも自分の気持ちが優先しているんですね。
 
 幸夫はその後、妻の親友だった大宮ゆきの夫陽一から電話をもらいます。
気が向いたら電話をかけて欲しいとゆう陽一でした。
同じ境遇、親友同士だった妻達の話をしたいようです、レストランで待ち合わせると、陽一は長男の真平と妹の灯(あかり)の2人の子供を連れて来ました。

その席で灯にアレルギーが出てしまい、病院へ陽一が運びます。その間幸夫は長男と陽一のアパートで待っていました。幸いにも灯は大事に至らずにすみましたが、陽一が長距離トラックの運転手で、留守がちであることを知った幸夫は、自分はパソコン1つとノートさえあれば、どこでも仕事ができるからと、陽一の帰れない日だけ、留守番をしに来ようかと提案します。この提案は正直意外でした。
この人に他人の家庭を心配するような優しさがあったとは。。

意外なのは、それだけではありませんでした。 子供を育てた事のない幸夫ですが、扱いがうまい! まだ幼い灯ですが、一緒にお米をといだり、野菜炒めを作ったり、自分が一手に何かを引き受けるんじゃなく、共に楽しんでやります。
灯がお兄ちゃんと喧嘩してこぼしたお米を拾う時も「お米さん、可愛そう~」と言いながら拾います。 灯の保育園の送迎も、真平の深夜の塾からのバス停までの迎えも、実に楽しそうにやっています。 塾の勉強の相談にものり、励まします。

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冒頭の妻夏子との、嫌な感じの会話の時とは、別人のようだと思ったのは、私だけでしょうか? この人は、自分でも気がついてなかっただけで、もしかしたら父親に向いてるのかもしれません。子供達もすぐに心を開いたし、蓋をされてた幸夫の父性が二人と接してるうちに出て来たとしか思えませんでした。
 
 四人で海に行った時、海で遊ぶ子供達を見ながらの二人の会話が印象的でした。
   
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幸夫  「守る者があって羨ましい~僕はそう思った」
陽一  「いや~おっかねえって、あいつらいなかったらさ~楽だろうな~て思う事あ  んだよね。俺一人なら、明日事故って死んだってかまわねえけど」
幸夫「バカな事言って、あの子達がいるから生きてけるのに」

そして陽一は「なんで夏ちゃんいないんだろうね~やっと幸夫君来たのによ」と言います。その言葉からは、夏子は親友のゆきだけではなく、大宮家の家族全員とも仲良くしていたんだな~とゆう事がわかります。。幸夫には海で子供達と遊ぶ夏子の姿が見えるようでした。
 
きっと今までも、今度ご主人連れて来なさいよ~よ言われてたのかもしれませんね。
だからこそ、やっと来てくれたとゆう言葉に結びつくのでしょう。でも、そう言われても夏子は幸夫に声をかけてなかったと思います。あの冒頭の会話ですから、「なんで俺が、あなたの友達の一家に会うんですか?」そんな返事しか聞けなかったでしょうから。。。

もしそんな機会があったなら、また二人の関係も変わっていたかもと思うと、悲しくなりました。灯がヤドカリを持って来て父親に「このヤドカリさん、去年とおんなじ?」と聞くと、陽一は泣きだします。灯の言葉で去年みんなで来た時の事を思い出したのでしょうか。。

帰りじたくをしながら幸夫が真平に陽一の事を話します。
「また泣いてたね。でもね、弱いから泣くんじゃないんだよ。お父さんはね、強いんだよ。強い人はね、大事な人を亡くした時に、ちゃんと逃げずに悲しんでちゃんと泣くの」そう言います。
妻が死んで以来、涙を流した事のない幸夫、対照的にことごとく妻を思い出しては涙する陽一、でも子供の前で、そんな父親を実はと強いんだよ。。そう言ってあげれる幸夫に、初めて好感が持てました。それはまるで自分に言ってるかのようにも聞こえました。幸夫は少しずつ、何かが変わってきている、そう思えた瞬間でした。
 
幸夫は岸本に電話をし、以前持って来たテレビのドキュメタリ―の仕事を引き受ける事にします。ロケに来て行く服を選んでる時、夏子の遺品の携帯がふいに復活し音が鳴りました。確認すると、下書きに、自分宛ての愛してない ひとかけらも)その言葉が残されていました。驚きが怒りとなり、幸夫は妻の携帯を投げて割ってしまいます。
 
テレビの仕事に行き、事故現場に花を置き、手を合わせる幸夫。
その間にも、テレビカメラは回っています。そして、
「天国の奥様へ今どんな事、伝えたいでしょう?何か伝えたいメッセージがあればどうぞ。。」とゆう、番組的には一番いいシーンで、カメラに向かってまるで妻に叫ぶような暴言を吐いてしまい、マネージャーの岸本に取り押さえられます。

幸夫の心を、夏子のメールの言葉が乱していたのでした。 一時はどうなるかと思われた番組ですが、大宮家での幸夫の奮闘ぶりなどを撮影し、何とかうまく編集し、あの幸夫が暴言を吐いたシーンは、陽一が言うことで、うまくまとまりました。

陽一の天国の妻へのメッセージは「帰って来て欲しい、それだけ」でした。
このシンプルな言葉こそが、スタッフ一同が一番欲しかった言葉なのでしょう。
本当に大宮さんちで撮らしてもらって良かった~と言い、マネジャーの岸本に「岸本さん、ナイスフォローですよ。まじ終わったと思いましたもん。。湖で」と言ったシーンは笑えました。本当にそう思ってもおかしくないくらいの言葉を幸夫は言いましたから~(^_^;)
これに冷静になった幸夫のナレーションが入り、「雪柳湖 バス事故の記憶 津村啓
愛する人の死を超えて」とゆうドキュメンタリー番組は無事に放送されました。
 
この番組を見ていたのが、夏休みの親子科学教室で、灯に実験の指導をしていた
鏑木(山田真歩)とゆう学芸員です。彼女は元々、衣笠幸夫こと津村啓のファンらしく、先日のテレビ放送を見て感動したと挨拶に来ます。

陽一は自分もその番組に出ていたので、「俺、わかりました?」などと興奮気味に聞きますが、幸夫はクールな対応しかせず、遊んでいる子供達に呼ばれて席を立ちます。その際「良かったら、番組の感想でも彼にぜひ!」と陽一にまかせて立ち去ります。優しい陽一は、鏑木を座らせ、話をします。

その事がきっかけで、灯の六歳の誕生パーティーに参加するほど仲良くなった鏑木と大宮一家。 ローソクを吹き消すと幸夫がプレゼントを渡す前に、鏑木がプレゼントを渡します。四人で和気あいあいと会話している姿が、本当の家族のように思え、
自分の席が奪われたような気がしておもしろくない幸夫でした。

その後、鏑木の両親が経営する、子供の一時預かりの施設に灯をあずけようと思うとゆう話が出ます。灯の保育園からも近いようです。実は先日幸夫は、いつまでも大宮家に通う事はできない。。。そんなニュアンスの事を言ったばかり。
それで幸夫に迷惑をかけたくないとゆう陽一の配慮だったのですが。。。
自分で言っておきながら、いざそうなると思いのほか寂しく思う幸夫でした。

幸夫は陽一が戻れない日の家までの送迎はどうするのか?鏑木の親が70代とわかると、70過ぎの人が夜中に子供を乗せて運転て、どうなんだろ?と言いますが、最後には「私も運転できますので~」とゆう鏑木の言葉に黙ってしまいます。

その後、話が子供の事に及び、灯に「幸夫君は、どうして子供がいないの?」と聞かれると、子供がいるからって、いい事ばかりじゃない。時間はとられる、金はかかる、 犠牲にされる事はいっぱいある、天塩にかけて育ててきた子供に、人生めちゃくちゃにされるって人も山ほどいる。子供がいないほうがリスクは少ないと言います。

そして「僕はね~自分の意志で作らなかったのよ。こんなろくでもねえ人間増やして、どうすんだよって思うんだもん」 これは自己否定の凄い言葉ですね。

それに対し陽一が「夏ちゃんは、どう思ってたんだよ、子供欲しかったんじゃないのかよ」と言いますが、幸夫は「ないよ、それは。。あの人、子供が苦手なんだもん」

それに対し陽一が「幸夫君、本当にそう思ってるの? 俺は違うと思うよ、夏ちゃんは幸夫君の子共、絶対に欲しかったと思うよ」

そうゆう陽一に「頼むから自分の幸せの尺度だけで物言わないでよ。あり得ないんだよ、僕の子供なんて欲しくないですよ、あの人は。。欲しくないまま死にました」

そう言うと、「ごめんなさいね、こんな日にね~僕はもう~場違いだな~帰ります」と言って出ていきます。それを追いかける陽一。

タクシーに乗ろうとする前に、追って来た陽一に、お似合いだよ、よろしくやってよ。ゆきちゃん忘れるには一番の薬だよ~と言います。あたかも二人が関係があるかのような言い方に、つかみかかる陽一。その彼に幸夫が言います。
「いいじゃない、僕よりましだよ。僕はね、夏子が死んだ時、他の女と寝てたんだよ。君とは全然違うんだよ」。そう言いの残し、タクシーに乗り込み去って行きました。

誕生祝いから始まり、幸夫が初めて夏子が死んだ時に不倫していたことを告白するまでのシーンは、まさに息ずまるような緊迫感があり、本木さんの演技に、惹き込まれてしまいました。
 
その夜お酒を飲み、トイレで吐いてる時、真平からの不在着信に気が付きますが、かけなおす事はしませんでした。
その日から幸夫は大宮家に行く事はなくなり、その分長男真平に負担がかかりました。父親が帰らない日は妹んめんどうをみなくてはなりません。塾も休みがちになります。家の中も散らかり放題、そんな自分に気ずく事もなく、ただ仕事に疲れ眠り呆ける父親に距離を感じる真平でした。 そしてやがてそれが爆発する瞬間が来ます。ちょっとした言い争いから、僕はお父さんみたいになりたくない。。そう言ってしまいます。 幸夫のような繊細さのない陽一は、仕事で疲れ、子供の抱えてる悩みに気ずく事ができなかったのでした。
 
幸夫が食事をしていると、電話が鳴りました。
それは陽一が国道で事故を起こし、こちらに搬送されてきたとゆう、病院からの電話でした。あわてて部屋を飛び出す幸夫。ちょうどその時、真平からも電話が入り「幸夫君、お父さんが帰らない」と言います。まだ事故の事は知らないようです。「真ちゃお父さん無事だよ、心配いらない」幸夫はそうゆうとアパートに走って行きました。

幸夫は灯を鏑木の両親の一時預かり所に頼むと、真平と一緒に電車で陽一の病院へと向かいます。

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真平は幸夫に「最低なこと言っちゃった」と、父親との喧嘩の話をします。
そして自分は事故に遭ったのがお母さんじゃなくて、お父さんだったら良かったと思ってたと言いました。それに対し幸夫は、それは誰よりもお父さんが一番思ってきた事だと思う、ずっと一人でそう思いながら、それでもお父さんはハンドル握って踏ん張って来た。。そう言います。

「生きてりゃ色々思うよ、みんな、でもね、自分を大事に思ってくれる人を簡単に手放しちゃいけない、みくびったり、おとしめちゃいけない、そうしないと僕みたいになる。。僕みたいに愛していいはずの人が誰もいない人生になる。。簡単に離れるわけないと思ってたのに離れる時は一瞬だ。。そうでしょ? だからちゃんと大事に握ってて。。君らは。。」そう言います。

それをじっと聞いてる真平は、何を思ったでしょうか? 聡明な彼は、きっとこの言葉の意味を理解し、心に刻んで生きて行くと思いました。この二人は相性がいいとゆうか、真平は幸夫に心を開き、ある意味父親の陽一よりも何でも言えるし、幸夫もまたこの子の前では本音が言える気がしました。
 
父親の病院の前で二人は待っています。出てきた陽一の元へ、幸夫は真平の背中を押して行かせます。「大丈夫_」「うん」とゆう会話を聞き、安心したように笑い、トラックに乗り込んで帰って行く二人を見送りました。トラックの窓から乗り出して大きく手を振る真平に手を上げて応えると、電車に乗る為逆方向に歩いて行きました。
 
帰りの車中、幸夫は、ペンを走らせました。ずっち書けなかったのが嘘のように、次々と言葉があふれて来ます。。。頬を涙が伝わりました。
 
幸夫はその時の作品「永い言い訳」でしらさぎ文学賞を受賞します。
その祝賀パーティーには、大宮一家と鏑木も来ていて、口下手の陽一に代わりに、中学生になった真平と一年生になった灯がお祝いの言葉を言ってくれます。

どうやら親子関係は良好のようです。、音楽に合わせ二人は踊っています。
その光景を見ている幸夫の元へ灯が写真を持って来ます。それは大宮一家と楽しそうに笑っている夏子の写真でした。それを見つめる幸夫の目に涙が光りました。
ラストはその写真を飾ってある部屋で、夏子の自分の髪をいつもカットしてくれたはさみを手で触り、その後他の遺品と共に箱にしまうシーンで終わります。

                        予告  

色々な事を考えさせてくれる、深い映画でした。
受け取り方は観た人それぞれ違うと思います。

主人公の幸夫は妻を亡くした後、同じく妻を亡くした大宮陽一と知り合い、その子供達と関わる事で、そして自分の存在が大宮家の役に立っていることで、今までにない充実感を覚えます。

灯の誕生日の席で、子供がいれば幸せとは限らない、むしろリスクの方が多い、妻との間に子がなかったのは自分達の選択だと言いましたが、海では遊ぶ子供達の姿を見ながら「守る者があって羨ましい~僕はそう思った」と言います。
相反する言葉、いったいどちらが本当なのでしょう? 私は海での言葉が本心のように思います。 で、なければ、頼まれてもいないのに、大宮家に子供の世話に行くでしょうか?

もしかしたら、逃避かもしれないし、夏子の親友の家族を支える事で、事故の時不倫していた自分の罪の意識を軽くしたい為なのかもしれませんが、私はそれだけではないと思います。 地震の時に二人を守るように抱えた姿、一生懸命に急な坂を灯を乗せて自転車で上って行く姿、それは本物だと感じました。
そしてこの映画の中で、私が一番好きなのも幸夫が子供と関わってる時の幸せそうなシーンなのです。

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マネージャーの岸本が幸夫の携帯に付いてるストラップを見て「何なんですか?それ」って聞いた時も、「あっこれ? お兄ちゃんがね、こないだ日光で 修学旅行で 眠り猫 ニャ~ン!」とその猫のストラップを嬉しそうに触りながら答えます。
しかもニャーンの時には猫の手振りまではいってましたよ(笑)

あの冒頭で、つまらなそうな顔で夏子と会話してた幸夫がまさかのニャ―ン(笑)
結びつきません。 予想もしないお茶目ぶりで、えっ?て感じでした。その後は聞かれてもいないのに、腕輪の様なものを見せて「これは下の子が作ってくれたの」と言いました。お兄ちゃん、下の子、まるで自分の子供のような呼び方。そしてこれは上の子のお土産、これは下の子が作ってくれたんだよ~と自慢してる父親のようにも見えました。 子供達の前で見せる幸せな表情。これは自然に出てくるもので、この人はきっといい父親になったんだろうな~と思わせてくれるシーンでした。

陽一も言ってましたが、本当は夏子も子供が欲しかったのかもしれません。
きっと親友のゆきには、そんな気持ちを言っていたのかもしれませんね。それを夫である陽一も知ってて、「夏ちゃんは絶対に幸夫君の子供を欲しかったと思うよ」とゆう
 言葉につながったのでしょう。

幸夫が有名作家となった今も依然としてなくならない空虚感、愛人に言われた 先生は、自分の事も誰の事も抱いていない。。と言った言葉も、そのあたりと関係してるような気がしてしかたないのです。

幸夫は海で「「守る者があって羨ましい~僕はそう思った」と言いました。その言葉通り、幸夫は守るべき存在に対して驚くほど献身的です。もしかしたら、今まではそんな存在はいなかったのかもしれません。

夏子はしっかり者のカリスマ美容師です。作家として売れない時期も支えてくれた、むしろ自分を守ってくれた人。 マネージャーはわがままな自分が暴走した時も、うまくその場を治めてくれる。。そう、幸夫は守られてきた存在なのです。だからこそ、子供達を守れる存在になった時、今までの心の空虚さが埋まって行くようで、本来は持っていたであろう優しさや明るさが、一挙に出たのかもしれません。

電車の中で書いてた人生は他者だ。。。この深い言葉の意味は、人それぞれに受け止めたらいいと思います。 個人的には人生は他の人との関わりで流れて行く、他の人が教えてくれる自分の存在価値もある、そんな意味に受け止めました。
この時、頬を伝う涙は、夏子に対してではなく、今までせき止められていた色々な感情が、流れ出したのだと感じました。
 
愛してない ひとかけらも。。夏子はあの当時、幸夫が浮気してた事を知っていたのだではないでしょうか。。。
冒頭のシーン、髪をカットしてる途中に愛人からのメールが入りましたが出ようともしない幸夫。普通人気作家なのですから、誰から何の連絡が入るかわからないのに、確かめようしないのは不自然ですよね。

夏子は自分が出かけたらすぐに不倫相手と連絡をとると確信していたのではないでしょうか?
で、なければ「後片付けお願いね」を言う為だけに戻ってくるでしょうか? なぜならその前の会話で「間に合うの?」とゆう幸夫の言葉に、「だめかもね~」と答えているのです。だめかもね~すなわち、ギリギリ、あまり余裕がないとゆう意味ですよね。それなのに財布を忘れたとかの理由以外で戻るとは思えません。

ドアを開けたまま覗き込むようにその言葉、「後片付けお願いね」を言ってる夏子の目が少し怖く感じたのは、私だけでしょうか~ そしてその彼女の目の前では、携帯のストラップが大きく揺れていました。疑いが確信に変わった時、夏子はどう思ったのでしょう。
 
友達と会った時は楽しそうにしていた夏子ですが、バスから外の景色を見る表情が、これから親友と楽しい旅行に行くとは思えなほど暗く感じたのは、その事があったからかもしれません。そしてそんな気持ちのまま、旅立ってしまった彼女を思うと、やりきれないほど悲しくなります。
もう少し、二人が本音で歩み寄れていたら、別れは同じでも、あんな会話では終わらなかったように思います。そこが残念でもありました。
 
役者さん達の演技が、皆さん素晴らしく、素朴な感じの黒木華さんが今回は愛人役をされたのも新鮮でした。夏子役の深津絵里さん、出番は少ないですが、存在感がありました。 でもやはり何と言っても、本木さんの演技に魅せられましたね。
やはり本木さんありきの作品だと思います。
重いテーマではありますが、彼の独特の話し方は楽しめました。
そうそう、お花見のシーンでは久々に本木さん(モッ君)の歌が聴けましたよ~♪
恋のダイヤル6700 ) 
これはこれで、楽しかったです(笑) 

挿入歌「オンブラマイ」も、絶妙なタイミングで流れます。素敵なシーンと共にお楽しみいただけると思います。
 
自分の事を振り返ったり、周囲の大切な方々との関わり方を考えさせられる、映画でした。観て良かったです。
自分を大事に思ってくれる人を簡単に手放しちゃいけない、
私もその言葉を胸にしっかりと刻みたいと思います。
興味のある方、ツタヤにレッツゴーですよ。
 
 (おまけの一言)
梅雨に入ってから、そんなに毎日雨が降ってるわけでもありませんが
時折降る恵の雨のおかげで、近辺のお花は元気に咲いてます~♪
紫陽花 今のうちに楽しみましょう。

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