私のシネマワールド

映画の事を中心に、気の向くままに書いております。

希望の灯り ジワジワと静かに心に響いた作品!

                                                希望の灯り

f:id:you1825m:20200715225046p:plain


(ストーリー)
旧東ドイツライプチヒ。27歳の無口な青年クリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)は、スーパーマーケットの在庫管理係として働くことになる。仕事を教えてくれるブルーノ(ペーター・クルト)や魅力的な年上の女性のマリオン(ザンドラ・ヒュラー)ら職場の人たちは、親切だったが節度があった。(シネマ トゥデイより)
             
                                                                                 
少し前に書いた記事、ギルディーに続く 地味な映画をWOWOWで観ました。
ギルディーはこちら→ https://you1825m.hatenablog.com/entry/2020/03/13/224843
とにかくこちらも地味な映画です(笑)
 
男女は出てきますが、特にイケメンや美女の登場はなく、出てくる場所も、ほぼスーパ―の倉庫。 ここで繰り広げられる群像劇と説明されていますが、 ほぼ主人公の青年中心のお話で、ストーリーが進んで行きます。
旧東ドイツライプツィヒ  巨大スーパーで在庫管理係として働く事になった青年 クリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)27歳
冒頭で彼が何者かは、その腕や首に刻まれたタトゥ―で、少しは想像できます。
上司から、お客が嫌がるから腕の彫り物が見えないように気を付けるようにアドバイスされ、彼はそれをきっちり守り、制服の袖口をピシッと伸ばして着ています。
これは過去に何かやらかしたな~この口数が少なく暗い雰囲気の青年が、 みんなに疎外され、腹をたてていずれ働きながら何かをしでかすのでは?
などと勝手に想像しましたが、そんな事はいらぬ心配でした。 彼は真面目な気持ちで職場に来ているのです。
無口で暗いイメージの彼ですが、上司のブルーノからはなぜか気に入られ、少しずつスパーの仕事を覚えていきます。
人によっては、余計な事を言わず黙々と言われた仕事をやる、彼のような人物を好む人間もいるのですね。、

f:id:you1825m:20200712200838j:plain


やがてはなかなか扱いが難しい、フォークリフトの運転も教わるようになります。
その間、お菓子セクション部門で働く年上の女性、マリオンに恋もするのです。
                      
マリオンは休憩の時、自動販売機の前で「新人君 おごってくれないの?」と言ってくるような、フレンドリーな人柄。
色白で包み込むような優しさがあり、年下から見れば魅力的。休憩所でのつかの間の時間で、二人は親しくなっていきます。
                 

f:id:you1825m:20200723162023j:plain

 

そんな気持ちに気が付いたブルーノが、彼女は止めておけと言います。ベテランの女性従業員にも「彼女を傷つけないで」と言われます。なんと彼女は既婚者だったのです。
それでも同じ従業員同士、クリスマスパーティーをみんなと一緒に楽しみますが、その後は彼女と会う機会が減り、会っても前より距離を置いてるような態度。そしてやがては来なくなってしまいました。荒れたクリスティアンはかっての悪友達と酒を飲み、翌日の仕事に遅刻するとゆう失態をやらかします。
もしかしたら、既婚者の彼女に想いを寄せる事で彼女が困り来なくなったのか? そう思ったかどうかはわかりませんが、気持ちは落ち着きがありません。そんな彼を心配したブルーノが、マリオンは夫から大切にされていない、時に暴力を受けているようだと言います。
それを聞いたクリスティアンは、いてもたってもいられず、こっそり花を持って家に訪ねて行きます。 そして夫らしき人物が出かけたのを確認した後、呼び鈴を鳴らしますが、出てこないのでなんと開いてる入口を見つけると、家の中に入って行くのです。(マリオン 不用心だわ~)
不法侵入  ストーカー ? 見つかったら、大変だよ~と叫びたくなるシーン。
しかも入浴中のマリオンの姿を階段から偶然見てしまい、しばし動けなくなるのです。
気配を感じたマリオンが気がつきそうになり、あわててその場を立ち去るクリスティアン
 意外に大胆な面があるのね(笑)

その後マリオンも職場復帰をし、クリスティアンフォークリフトの試験に合格し、仲間達に祝福されます。 マリオンはクリスティアンに「お花をありがとう」と伝えます。置いていったお花で、彼が来た事はばれていたようですね(笑)
また以前のような日常が戻ってきました。
 
 
そんなある日、ブルーノに誘われ、、クリスティアンは彼の家に行きます。妻は寝ているから大声を出さないようにと言われ、二人はお酒を飲みながら色々と話します。
ブルーノは、初めて クリスティアンに過去の事を聞きます。彼は昔仲間とつるんで盗みなどを働いて少年刑務所に入ってた事を打ち明けます。しかしブルーノは、腕や首から見えるタトゥ―から、おおよそ察してはいたようで、特にそれを聞いても驚きはしませんでした。
むしろ、「お前はいい奴だ、みんなお前をいい奴だと思ってる」そう言って励ましてくれました。
そしてマリオンを支えてやれと言います。
ブルーノは自分の話もしました。東 西ドイツが統一される前には、長距離トラックの運転手をしていたそうで、「あの頃は良かった」と懐かしそうに言いました。
 
彼の家からの帰り、歩く道は国道沿いだったようで、トラックが列をなして走っていました。長距離トラックの仕事をしていた頃の事を懐かしみながら「あの頃は良かった」と言ったブルーノの言葉がそれに重なり、感慨深いシーンでした。

 

             f:id:you1825m:20200723150213j:plain


 
そんなある日ブルーの姿が見えない事に気がついたクリスティアンが、職場でブルーノと長年の友人でもある従業員に「ブルーノは?」と聞くと、彼はつらそうにブルーノが自殺したことを告げました。みんなも驚きを隠せないようでしたが、そんな中マリオンは涙を浮かべ、その場を立ち去ります。
後日、皮肉にもブルーノの代わりにクリスティアンが飲料セクションの責任者になりました。
ラストは、クリスティアンとマリオンが一緒にフォークリフトに乗りながら、リフトを上げ下げしているシーンで終わります。この時の音が波の音に聞こえるとブルーノが言っていたそうです。
二人にもその音が聞こえたでしょうか?

     f:id:you1825m:20200723174100j:plain


 (感想)

この映画は、知ってる俳優さんも出てないし地味。たまたまつけたらやってただけで、特に興味もなく流れるままに見たとゆう感じだったのですが、途中からこの作品の何ら大きな山場もない静かな世界にジワジワと引き込まれてしまいました。
ここに出て来る人は、みんないい人。ブルーノも職場の仲間もタトゥ―だらけのクリスティアンに偏見を持つ事なく、プライバシーにずけずけと立ち入る事なく仲間として受け入れてくれました。 フォークリフトの試験に合格した時もみんな拍手して喜んでくれて。。 
 
終業後のクリスマスパーティー 裸で椅子に寝ころびイビサ島みたいだな~とはしゃぐ仲間、帰り際に1杯飲めば世界はバラ色だとゆう仲間
マリオンの誕生日に小さなケーキにローソクを立てて、おめでとうとゆうクリスティアン

f:id:you1825m:20200712194846j:plain


廃棄物になった食品を「まだ食べれるのにもったいない」とおやつに食べる仲間
みんな裕福でなくとも、それぞれの居場所で自分なりのささやかな幸せや楽しみを見つけて過ごしています。その姿が何だか愛しく感じるのです。
当たり前の日常や、共に笑える仲間のいる事への感謝、小さな事に喜びや楽しさを感じる感覚を忘れないでいたいな~と思いました。そう思えただけでも私にとって価値ある映画です。
 
それにしても主役の男性は、どこかホアキン.フェニックスに似ているんですよね~(笑)
そして口数が少なくシャイな印象の彼ですが、あれ?と思うシーンもあるんですよ。
それはクリスマスの時の事ですが、従業員達は仕事が終わった後、外でパーティーを開きます。お酒を飲みパーティーを楽しむ片隅で、クリスティアンとマリオンは並んで椅子に腰かけます。
クリスティアンはマリオンが寒くないように優しく毛布をかけてやります。やがて手を握るクリスティアン、そしてマリオンに聞いてみます。「もし叶うとしたら何を願う?」
すると彼女は彼の肩にもたれてこう言います。「すべてよ」と。。。

      f:id:you1825m:20200723161829j:plain

このシーン、けっこう好きです。 多くを語るわけではありませんが、つかの間の幸せに浸る恋人同士の様な二人。マリオンも気持ちがないわけではないのね~と思いました。
注目すべきは、この一連の流れ。何だか女性慣れしてるプレイボーイの行動と言葉みたいじゃないですか~?(笑)
 
それにしても良き仲間、そして先輩であるブルーノが自殺したと聞いた時は、映画の中のクリスティアンや同僚達と同じくらい、私もびっくりしてしまいました。なぜに?
もしかしてクリスティアンを家へ招待してくれ、みんながお前をいい奴だと思ってる、と言ったのは、最後の彼へのメッセージだったのでしょうか? だから頑張るんだぞ。。。とゆう
本当のところはわかりませんが、クリスティアンをしっかり指導し一人前にしてくれた、 遅刻しても注意はしても怒りはしなかった、彼からは常に温かさを感じていただけに、映画の中の事なのにすごく悲しくなってしまいました。 スーパーでの仕事ぶりも立派で、仲間もいて、クリスティアンとも親子のような信頼を築けてきたのに、それでも命を絶つなんて。。残念過ぎます。
でも人にはそれぞれに他人には計り知れない気持ちがありますからね~彼からは温かさと同時に常に孤独とゆうものを感じてはいました。彼は東西ドイツが統一される前のトラックの運転手をしていた時の事が忘れられなかったのでしょうか?
最後にとても悲しい事が起きてしまいましたが、ブルーノの死によってこの作品がぐっと深さを増した気がします。 ベルリンの壁が壊され統一した事は良かった反面、本来居たかった場所を失った人達もいるのだな~と感じました。 水槽の魚1匹が、まるでそこから抜け出したいかのように跳ね上がるシーンがあったのですが、ブルーノもまたスーパーの限られたスペースではなく、広い海へと出て行きたくなったのでしょうか~ かってトラックを飛ばしてあちこちを走っていた頃のように~ 一人前になったクリスティアンに安心して、後を託して旅立って行ったのでしょうか?
クリスティアンもマリオンも、フォークリフトの波のような音を聞くたびに、きっとブルーノの事を思い出すことでしょうね。 
                   

    f:id:you1825m:20200723161656j:plain

 

原作はクレメンス・マイヤー(ドイツ語版)の短編小説 『通路にて』
何だかこのままのタイトルでも面白かった気もしますね。 興味のある方は、ぜひごらんください。 シーンごとに流れる色々なジャンルの曲も素敵ですよ。

第68回ベルリン国際映画祭(ドイツ語版)でエキュメニカル審査員賞とギルド映画賞を受賞した他、第68回ドイツ映画賞(ドイツ語版)では作品賞(ドイツ語版)ほか計4部門にノミネートされ、フランツ・ロゴフスキが主演男優賞(ドイツ語版)を受賞。
監督: トーマス・ステューバ
 
 
 
 
 (気ままにおしゃべり)
ご無沙汰してしまい、申し訳ありません。
PCの調子が悪くて、途中まで書いては急に電源が落ちて消える事数回。
ならば少しずつ下書き機能を利用して保存しながら書いて行こうかと思いきや、保存をクリックしてもエラー 保存できませんでした。。と出ます。
PCは10年ぐらいがぎりぎりでしょうか? そろそろ買い替えなのかな? でもすぐにはできないので、iPad から記事投稿ができるよう練習しなければ~
少しの間、お題とか雑談のような記事が多くなるかもしれませんが、よろしくお願い致します。
今日はたまたま、ラッキーにも消えませんでした~♪